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「幸せになる・幸せにする経営学 ~目利きと器量とは~」 児山 俊行 助教授
「幸せになる・幸せにする経営学 ~三方よしについて~」 児山 俊行 助教授
「幸せになる・幸せにする経営学」 児山 俊行 助教授
 
2005年08月29日
「幸せになる・幸せにする経営学 ~三方よしについて~」 児山 俊行 助教授

その商家で生まれた跡継ぎは、その【三方よし】【始末】といった商人感覚を少年時代からみっちりと仕込まれます。
例えば、『てんびんの詩』という映画がありまして、その中で昔ながらの「天秤棒」を担いで行商するという「あきんど」修行が出てきます。それは、近江商人の跡継ぎ少年が小学校卒業早々、質素な身なりでおかずナシの日の丸弁当を下げ鍋蓋(ナベブタ)を売りに歩くというものでした。時は大正時代といっても、鍋蓋などはどこの家庭にもあるものですから、なかなか売れません。彼は親戚などを頼って売りに歩くのですが、これは修行だと事情がわかっているのでやはり買ってくれません。その後、3ヶ月間行商するのですが、どうしても売れません。ところが、とうとう売れる日がやってきました。いったい、どうやって売れたのでしょうか?それは「鍋蓋を売らなかった」からなのです。

当時、農村では水道がなく、みな井戸や川で洗い物をしていました。女性たちは農作業に加え、大家族の洗濯に三度の食事とあと始末と、洗濯機も食洗器もない時代にひとことで「家事」と言ってもそれはそれは大変だったと思います。そこで跡継ぎ候補の彼は苦心の末、鍋を洗うサービスを始めたのです。お代は新品の鍋蓋代というわずかなもの。すると、感心な行商少年がいると伝わり、その集落じゅうからご婦人たちが集まってきて、あっという間に鍋蓋が売り切れてしまったというわけです。

同じような話が、海の向こうの米国に留学した、ある日本人青年のエピソードにもあります。彼は、偶然出合った大富豪にお金持ちになるための教えを受けようとアタックします。大富豪は教えを授けるかわり、その青年に様々な課題を出します。その中に「1000個の電球を3日で全部売ってきなさい」というものがありました。いったい彼はどうやってこの課題をクリアしたのでしょうか?実は、彼もまた「電球を売らなかった」のです。まず高齢者の多い住宅街に焦点を絞り、“電球交換サービス”なるものを始めました。

高齢者の場合、足腰が弱くなり台に乗って電球を替えたりするのがおっくうになりがち。だから電球が切れたままになっている家が多いかもしれない・・・という仮説を立て、さっそく家々を回りました。「切れている電球があったら付け替えます。料金は電球代だけでいいですよ」と。最初の訪問先のおばあちゃんは快く彼を家に迎え入れ、青年は切れている電球を交換しました。しかも丁寧に掃除機までかけたのです。素晴らしい若者がいると感激したそのおばあちゃんは、彼の手をひいて近所の年配者宅を次々と回りました。すると電球はたった1日で売り切れてしまったということです(本田健『ユダヤ人大富豪の教え』大和書房)。

話しはまたまた変わりますが、「痛くない注射針」というものを聞いたことがありますか?この不可能を可能にしたのは、たった6人しかいない町工場の“代表社員”である岡野雅行さんです(岡野工業・東京都墨田区)。その針は、インシュリンを日常的に注射している糖尿病患者さんは皮膚が固まってしまい注射がむずかしくなっていくという相談を受け、技術とコストの難問題を乗り越えて実用化したものなのです。また、皆さんの持っている携帯電話の部品も岡野さんが開発しました。大きな充電量を持つリチウムイオン電池を使おうとする場合、リチウムはその性質から普通に加工をほどこした電池ケースでは液漏れして爆発する危険性があったのです。しかし岡野さんは、1枚のステンレス板から液漏れしない超薄型の電池ケースを見事に作ってしまいました。

岡野さんのすごいのは技術だけではありません。難しい製品を完璧に仕上げるだけでなく、お客である大企業に大量生産できるシステムもセットで販売するのです。そのことによって、岡野工業側に莫大な利益が入ると同時に、大企業側も量産システムを作る手間が省け、すぐに製造・販売ができるので大助かり。つまり、「自分ももうけて、相手にももうけさせる」という【WIN-WIN】をしっかり実践されているのです。例えば、それはこんなところにも現れます。ある機械メーカーの営業マンから「この機械、性能が良いのですけど売れなくって・・・」と相談を受けた岡野さん。すぐさま「まず格安で下請企業に使ってもらったら?本当に良いものなら、その下請の親企業が気付いて高くで買ってくれるよ」とアドバイス。結果はその言葉どおりになったそうです。ともあれ「岡野工業に頼めば、技術面でも利益面でも損はない」ということになり、仕事が途切れない不況知らずの町工場となったのです(岡野雅行『俺が、つくる!』中経出版)。

以上の事例は、お客の立場に立って、モノ(ハード)を売るために一緒にサービス(ソフト)を売った例---【iモード】サービスの付いたネットのできる携帯電話の販売“鍋洗いサービス”によるナベブタ行商“電球交換サービス”による電球販売・量産ノウハウ付きの高難度加工製品の販売---と言えるかもしれません。それぞれのビジネスは、モノをおカネに替えるだけでなく、売り手も買い手も、そして世間とも喜びあうことができたのです。

そして最後に、TVでもおなじみの、ある名セリフで有名な方から学んでみましょう。


 
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